11/03/2026 | Press release | Distributed by Public on 11/03/2026 17:05
(東京)―高市早苗首相は、2026年11月8日から11日まで日本を公式訪問するベトナム のトー・ラム(To Lam)国家主席に対し、人権分野で具体的な前進を図るよう求めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは高市首相に書簡を送り、ベトナムで人権への弾圧が強まっていることへの懸念を伝えた。こうした弾圧は、ベトナムと日本がともに締約国である2018年の「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP、いわゆるTPP11)の下で、ベトナムが受け入れた義務に反している。
「ベトナム政府は改革の約束を破り、基本的自由への弾圧を続けている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗は述べた。「高市首相はトー・ラム国家主席に対し、人権と労働者の権利の侵害について日本が深刻な懸念を抱いていることを、公の場ではっきりと伝えるべきだ」。
ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、ベトナム政府はこの10年で基本的自由への弾圧を急激に強めてきた。トー・ラム氏は2016年から2024年まで公安相を務め、国家警察を率いた。現在はベトナム共産党書記長と国家主席を兼ねている。
日本はベトナムにとって主要な貿易相手国の一つであり、同国への海外直接投資でも最大級の出資国である。20年以上にわたってベトナムへの最大の二国間開発援助国であり、主要な貿易相手でもある日本は、ベトナムに人権状況の改善を働きかけるうえで、非常に有利な立場にある。
トー・ラム氏の下で、ベトナム警察は広範な取り締まりに乗り出して同国の市民社会を壊滅状態に追い込み、国境を越えた弾圧(トランスナショナル・リプレッション)を強めた。さらに国際人権法に反して、表現の自由の行使を犯罪とする過酷な法律の適用範囲を広げ、その運用を拡大してきた。
現在ベトナムには160人を超える政治囚がいる。これらの人びとは、表現の自由や、人権と民主主義のための平和的な活動の権利を侵害する法律によって有罪とされた。作家で人権擁護者のファム・ドアン・チャン(Pham Doan Trang)氏、土地の権利活動家のカン・ティ・テウ(Can Thi Theu)氏、独立系ジャーナリストのファム・チー・ズン(Pham Chi Dung)氏とグエン・トゥオン・トゥイ(Nguyen Tuong Thuy)氏、労働活動家のホアン・ドゥック・ビン(Hoang Duc Binh)氏、そして民主化運動家のレ・ディン・ルオン(Le Dinh Luong)氏、グエン・ヴァン・トゥック(Nguyen Van Tuc)氏、チャン・ドゥック・タック(Tran Duc Thach)氏、チャン・ヴァン・バン(Tran Van Bang)氏、グエン・チュン・トン(Nguyen Trung Ton)氏らがその例だ。
2026年1月から9月までに、ベトナムの裁判所は少なくとも31人の活動家に有罪判決を下し、長期の拘禁刑を言い渡した。その中には、著名なブロガーのホアン・ティ・ホン・タイ(Hoang Thi Hong Thai)氏やフイン・ゴック・トゥアン(Huynh Ngoc Tuan)氏も含まれる。このほか警察は、政府を批判したとして、少なくとも46人を逮捕した。
ヒューマン・ライツ・ウォッチによると、ベトナム政府は約束した法改正を実施していない。ベトナムはCPTPP第19.3条で、国際労働機関(ILO)宣言に述べられている権利(「結社の自由及び団体交渉権の実効的な承認」を含む)を、「自国の法律及び規則及び当該法律及び規則に基づく慣行において」採用し、維持することを約束した。また、結社の自由及び団結権の保護に関するILO第87号条約を2024年1月までに批准すると誓約したが、いまだ批准しておらず、独立した労働組合の設立を阻み続けている。
日本の『外交青書2026』も、「CPTPPを通じて、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった価値や原則を共有する国々と共に自由で公正な経済秩序を構築し、…大きな戦略的意義を有している」と述べている。だが、ベトナム政府はまさにこうした価値を組織的に踏みにじってきた。
悪化を続けるベトナムの人権状況に対し、日本はこれまで実質的な対応をとってこなかった。2023年11月には、両国関係が最高レベルの「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた。
「日本は、ベトナムの弾圧を大目に見るのをやめるべきだ」と前出の土井は述べた。「ベトナムにとって最も重要なパートナーの一つとして、日本はトー・ラム氏に対し、強固で長続きするパートナーシップには、基本的な権利の尊重と労働分野での約束の履行が欠かせないことを、明確に伝えるべきだ」。