株式会社内田洋行（本社：東京都中央区、代表取締役社長：大久保 昇、以下　内田洋行）は、ルクセンブルクに本社を置くOpen Assessment Technologies S.A.（以下、OAT）と共同で開発する 次世代版CBTプラットフォーム「TAOタオ」のフルラインナップを世界に先駆けて日本で発表します。

データを活用した教育や学習方法が求められるなか、学力調査や各種アセスメントでは、紙からタブレットやPCを活用したCBT（Computer Based Testing）への移行が急速に進んでおります。ただし円滑な活用のためには、多様な受検者が参加でき、大量の端末からのアクセスに耐え、収集したデータの活用を図るクラウドプラットフォームが不可欠です。このような背景から、内田洋行とOATは共同で開発を進め、最新のCBT基盤を目指してまいりました。

「TAO」は、オープンスタンダード^※1な技術を採用し、CBTシステムをネットワーク上で実現することを目指して、2002年から開発が進み、研究と活用が続けられてきたシステムです。2013年に会社を設立して以降、フランスやイタリア、イギリス、アメリカなどの主要国の大規模かつ重要な学力調査で採用され、現在では年間延べ3,000万人以上が利用する、CBTプラットフォームにおける世界標準としての地位を築いてきました。

日本では、内田洋行がOAT社と2016年から連携して日本国内でのCBT環境整備を進め、2020年には文部科学省CBTシステム「MEXCBTメクビット」で「TAO」が採用され、内田洋行とOAT社が中心となって開発と運用を担い、教育現場のCBT化を支えるシステムとして活用が進んでいます。

次世代版「TAO」は、これまで世界中で培われた「TAO」の理念と信頼性を継承し、あらゆる国や地域の学習者が、場所や言語、環境を越えて同じ基準で学びを評価できるプラットフォームとして新たに構築を進めてまいりました。一方、近年のクラウドの発展とIT端末の高機能化に伴い、CBTプラットフォームには、より大規模なテストを安定して実施できる性能、柔軟にデータがつながり合う教育デジタルエコシステム、多様な受検者に対応できるアクセシビリティ機能など、より開かれた高度な機能が求められるようになりました。その対応のため共同で次世代版の開発を推進する体制を整えることから、2023年にOAT社は内田洋行グループに合流しています。

2025年に実施されたOECD「生徒の学習到達度調査（PISAピザ）」では、プラットフォームとして次世代版が採用され、106の国と地域での実運用において大きな成果を上げました。今後も次世代版「TAO」の普及を通じて、すべての学習者が公平に試験に臨める環境の実現を世界で推進してまいります。

世界標準の教育評価システム次世代版「TAO」の全体構成

政府研究から生まれたTAOの沿革

「TAO」は、ルクセンブルク研究技術機構（LIST）とルクセンブルク大学により、2002年に共通CBT基盤として構想され、政府資金によるプロジェクトとして2004年に試作版がオープンソースとして公開されました。多くの研究者や教育機関から注目と高い評価を得ており2009年にはOECD PISAピザ調査に採用されました。

その後、各国の大規模学力調査での利用の要望に応えるため、ルクセンブルク研究技術機構（LIST）とオランダ政府教育評価機関（Cito）が出資し、OAT社が2013年に設立されました。OAT社は、各国政府機関・国際機関と連携を開始し、2016年のフランスを皮切りに、2017年にイタリア、アメリカニューヨーク市、2018年にイギリス、2024年にノルウェーなど、国家規模の学力調査やアセスメントで活用されてきました。2025年のOECD PISA調査においても、グローバルな学力評価を支える基盤システムとして採用され、その信頼性と先進性を世界の舞台で証明しました。1EdTechの世界標準規格策定にも参画し、主導してまいりました。

日本においては、教育の情報化とCBTの普及を見据えるなかで、内田洋行グループがいち早く世界標準のオープンソースCBTプラットフォーム「TAO」に着目。2016年からOAT社と本格的に技術協力を開始し、文部科学省による各種CBT実証において「TAO」を活用しました。その後、全国学力・学習状況調査におけるCBT化実証（2018年～2019年）や英語「話すこと」調査（全国約100万人規模）などに携わってきました。また、CBTを活用した国内における大学入試のテスト配信モジュールの提供など様々な技術的な試みを実施しました。

さらに2020年度からは文部科学省CBTシステム「MEXCBT」にTAOが採用され、2025年には全国学力調査の中学校3年生の理科においては世界最大級の100万人が利用するCBTシステムへと成長しました。内田洋行はその構築・運用を幹事企業として担っています。
各国での採用事例は以下の通りです（代表事例のみ抜粋）。

【国際的なTAO採用事例（OAT社による実施）】

2016年～	フランス　DEPP 国内の学力調査をCBTで実施
2017年～	アメリカ　NYC DoE 外国語のテストおよびギフテッドアンドタレントプログラムをCBTで実施
2018年～	イタリア　INVALSI 国内の学力調査をCBTで実施
2018年～	イギリス　NFER 就学前児童を対象としたアセスメントをCBTで実施
2024年～	ノルウェー　UDIR　国内の学力調査をCBTで実施
2025年～	OECD PISA調査　※OECD加盟国で実施される学力テスト

【日本国内でのTAO採用事例（内田洋行教育総合研究所による実施）】

2016年	文部科学省「高等学校基礎学力テスト（仮称）」オフラインCBT実証にて採用
2017年	文部科学省「児童生徒の情報活用能力の把握に関する調査研究」においてオンラインCBTプラットフォームとして採用
2019年	文部科学省「全国学力・学習状況調査 」（英語「話すこと」調査）においてCBTプラットフォームとして採用
2020年	文部科学省「学びの保証オンライン学習システム」（現MEXCBT）CBTプラットフォームとして採用
2021年～	厚生労働科学研究として、医師国家試験のCBT化に関する実証研究のCBTプラットフォームとして採用
2024年	国立大学法人電気通信大学　情報Ⅰ類「総合型選抜・学校推薦型選抜入試」においてCBT学力調査のテスト実施プラットフォームとして採用
2025年	全国学力・学習状況調査（中学3年理科）でMEXCBTによるオンラインで解答する試験（CBT）を本格導入し、動画を用いて出題。全国約100万人規模のCBT実施を支えたのは、TAOが持つ国際技術標準の安定性と拡張性です。

次世代版「TAO」の主な特長

次世代版「TAO」では、教育現場の多様化に対応し、誰もが公平に同じテストを受検できるアクセシビリティの強化と、世界的なCBT受検者数の増加を見据えた大規模・高負荷に耐えるシステム構造の全面的な見直しを行いました。新たなシステム構造では、従来は、一つのアプリケーションにまとまっていたモノリシックアーキテクチャーから、機能ごとに独立して動作するモジュール型プラットフォームへと刷新しました。問題作成、テスト管理、受検、採点、結果提供、ポータルまでの機能を独立したモジュールとして提供することで、利用者は目的や規模に応じて必要な機能を柔軟に選択・拡張できます。

タブレット端末の普及やクラウドの進展で、多様な人々が地域を超えて試験を受けられるようになってきました。「すべての人が、どんな環境でも公平に同じテストに参加できる」――これが次世代TAOの理念です。その理念の実現のため、アクセシビリティも大幅に強化いたしました。

1.世界中の誰もが同じ受検機会を得られるアクセシビリティ

アクセシビリティ対応の例：
≪多言語環境の学習者に対応≫

世界各地の受検者を想定した多言語UIを搭載。文化や言語に合わせて右から左の表記や日本語の縦書きにも対応し、出題ポリシーに応じて各地域仕様で表示できます。

≪視覚支援（弱視・色覚多様性・全盲）≫

フォントサイズの変更、画面の配色やコントラストの変更、音声読み上げ対応、画面の拡大表示、スクリーンリーダーへの対応、外部の点字ディスプレイとの対応など。

≪聴覚支援（難聴・ろう）≫

問題作成時に設定することで、字幕の挿入、テキストの添付、再生回数の制御や音量ゼロ設定にも対応。

≪肢体不自由や細かい運動が困難な方へ≫

長時間姿勢が難しい方のための一時保存・中断再開を標準化。キーボードだけで全操作完結（タブ・矢印・Enter）、OS標準の外部スイッチや視線入力など支援技術と連携。

≪ディスレクシアの学習者の方向け支援≫

文字サイズ・文字間・行間の変更、ラインリーダー、読み上げとハイライト同期、時間制限非表示設定など。

※本リリースに記載しているアクセシビリティ機能には、TAOの各モジュールで直接実現できるものに加え、問題コンテンツ制作時に必要となる事項や、外部機器・OS標準機能との連携が必要となる場合があります。

2.クラウドネイティブ構造により大規模な拡張・連携ができるプラットフォーム

3.国際技術標準で学習管理システムと柔軟に連携

TAOは、教育のデジタル基盤を支える「オープンスタンダード」に準拠し、最新の国際技術標準に対応した設計を採用しています。これにより、学習管理システム（LMS）や教育ツールと安全・柔軟に連携できます。また、教育機関や試験団体などの独自の分析・レポートシステムとも連携できるように、APIも利用できます。利用者は、自らのシステムにTAOを柔軟に"組み込む"ことが可能です。

■学習管理システムとの連携（LTI1.3）^※3：LTIに準拠した学習管理システム （LMS）から直接TAOを起動でき、ログイン情報などを自動連携。受検後の結果などを安全にLMSに戻すことが可能です。

■テスト問題の共有（QTI3.0）^※4：TAO上で作成した問題は、QTI対応の他システムでも利用できます。また他社ツールで作成した問題もTAO上で利用可能となり、テスト問題の相互利用を促進します。

※（従来版はQTI2.2、LTI1.1までの対応）

4.誰でも簡単に問題作成ができるオーサリング機能

CBT試験は、音声や動画などを活用することで、思考力・判断力・表現力など、多面的な力を評価できる新しい試験方式です。実際の音声を聞いたり映像で状況を確認したりと、紙の試験では困難だった多様な表現を使った出題も可能になります。TAOでは、視覚的なUIから問題タイプを選び、テキスト・画像・動画などのパーツをドラッグ&ドロップするだけで直感的に問題を作成できます。次世代版の問題作成環境「TAO Studio」では、問題・テストを体系的に蓄積し、タグ付け・検索等のライブラリ機能を強化し、過去問題の再利用や改訂を簡単に行えます。

※次世代版の問題作成環境「TAO Studio」は、2026年9月提供を計画中。

5.今後の拡張予定

―不正監視：国家資格試験など高いセキュリティが求められるオンライン試験にも対応できるよう、試験の不正監視機能の拡張を予定しています。受検者の画面や状況のモニタリングについては、外部監視・認証サービスとの連携や自社機能の開発を組み合わせ、より厳格な試験運営の実現を目指します。

―AI活用：問題の分類やキーワードなどの必要な情報（メタデータ）をAIが補完し、問題文の構成を自動で提案し、より分かりやすい問題作成をサポートします。この中でジェンダーバイアスをチェックするなど問題文の表現を補正する機能なども計画されています。

次世代版「TAO」のフルラインナップ構成

■次世代版「TAO」構成モジュール

「TAO Portal（ポータルサイト兼テスト管理）」、「TAO Advance（テスト受検）」、「TAO Studio（新・問題作成環境）」、「TAO Grader（採点）」・「TAO Insights（結果分析）」といったモジュールで構成されています。これらを組み合わせることで、教育機関や試験主催者は目的に合わせた最適なアセスメント環境を柔軟に構築できます。

※「TAO Studio（問題作成環境）」は、2026年9月提供を計画中。

■提供形態

SaaSにより次世代版「TAO」の利用環境を提供します。モジュール構成とライセンス体系により、TAOはあらゆる国・教育機関・試験組織に適用できるグローバルスケールの教育インフラに柔軟に対応します。

―TAO エンタープライズ（SaaS）
インフラ構築やサーバ管理が不要。ライセンス利用や受験回数に応じて柔軟に対応が可能です。受検者とコンテンツを登録するだけで即座にデジタルアセスメントを開始できます。導入・運用コストを抑えながら、安全な個別学習に応じた環境を提供します。学校や自治体は技術要員を増やさずに運用可能。予算や実施テストの要件にあわせてマルチテナント・シングルテナントから選択が可能です。

※年間利用料金：トライアルプラン　約60万円（税別・テスト回数：約2,400回）～。

世界中の知見を取り込むオープンソースコミュニティによる継続的な進化

次世代版「TAO」では、2026年1月5日にオープンソースも公開され、世界中の開発者や研究者が参加するオープンソースコミュニティとともに進化を続けます。ユーザーから寄せられる提案や改善を取り入れ、常に最新の技術・機能を取り入れます。また、世界規模の利用者ネットワークと連携し、継続的な更新を通じて、長期的な価値向上を実現します。

（ご参考）TAO Community Forum会員限定メンバーズサイト　https://forum.community.taotesting.com/

―TAO Community Edition（オープンソース）提供形態
世界の研究者が利用、改良できるようオープンソースライセンス「AGPLv3」に基づき公開。GitHubでのソースコード公開のほか、Docker版でも提供します。

製品名	TAO Community Edition
開発元	Open Assessment Technologies S.A.（OAT社／ルクセンブルク）
対応規格	QTI 3.0、LTI 1.3、WCAG2.1 AAなど ※国際的なウェブアクセシビリティ基準WCAG 2.1 AAにも対応
提供開始	「TAO Community Edition」2026年1月5日

内田洋行の教育データ活用の取組み

2025年に創業115年を迎えた内田洋行は、1人1台端末の導入、ネットワーク構築、クラウドサービス提供から保守サポートまで、全国の学校に教育ICTソリューションを展開しています。また、教育総合研究所（1998年設立）を中心に、総務省「フューチャースクール推進事業」や文部科学省「学びのイノベーション事業」など、産官学連携にも取り組み、2008年には全国学力・学習状況調査事業を受託するなど、教育アセスメント事業にも参入しています。2020年度からは文部科学省CBTシステム「MEXCBT」にTAOが採用され、内田洋行は構築・運用を幹事企業として担っています。全国の小・中学校におけるCBT環境の整備と安定運用を支え、2021年からはMEXCBTに対応した学習eポータル「L-Gate」を、全国の自治体へ提供しています。

また2016年には教育におけるオープンスタンダードの普及に向けた「日本1EdTech協会」の設立に協力し、日本における教育デジタルエコシステムの構築を推進しています。

内田洋行とOAT社は、次世代版TAOを通じて、教育データを活用した学びの質の向上と、公平で持続可能な教育環境づくりに向けて取り組んでまいります。

※1 オープンスタンダード（Open Standard）とは、世界中の教育・技術団体が共有する共通ルール。技術仕様が公開され、誰でも実装・利用できる技術標準をさします。異なるシステムやツール間でデータを交換・連携することができ、教育のデジタル基盤を広く共有できます。

※2 Web Content Accessibility Guidelines

※3 Learning Tools Interoperability（LTI^®）／学習ツール間の接続・データ連携に関する国際技術標準規格。

※4 Question & Test Interoperability（QTI^™）／異なるシステム間でテスト問題の相互運用を可能にする国際技術標準規格。
QTI^™ および LTI^® は 1EdTech Consortium, Inc. の商標または登録商標です。Question & Test Interoperability（QTI）^®、Learning Tools Interoperability（LTI）^® は1EdTech Consortium, Inc.の登録商標です。
TAO^® はOpen Assessment Technologies S.A. が開発・商品化しています。
TAO^® はOpen Assessment Technologies S.A. の商標です。www.taotesting.com

左から、OAT　Senior Director of　Global Assessment Solutions　Hatto Sterling 氏、同　Vice President of Product Management & President of OAT Corporation（US）Jeffrey Cuff 氏、同　Co-founder & Open-Source Community & Vision Ambassador　Patrick Plichart 氏、同 Co-CEO　町田 潔 氏、（株）内田洋行　代表取締役社長　大久保 昇 氏、同　執行役員 教育総合研究所　所長　伊藤 博康 氏、同　ICT&プロダクツデベロップメント事業部　副事業部長　畠田 浩史 氏、（株）インフォザイン　取締役　CBTビジネス部　部長　永井 正一 氏

※Open Assessment Technologies S.A. を "OAT" と省略して記載しております。

【このリリースのPDFダウンロード】

• https://www.uchida.co.jp/company/news/press/pdf/press251205.pdf［817KB］

【このリリースのお問い合わせ先】

株式会社内田洋行
広報課　深澤 琴絵・松永 裕香
TEL. 03（3555）4072　FAX. 03（3555）4620